長年の謎

 お父さんがトイレにいるときは、トイレの中だけ別の世界なんだと思う。

 私の父は、長い時間トイレにこもることがよくある。ほとんど毎日だろうか。休みの日は三回くらいあると思う。不思議なのは、声をかけるとすぐに出てくること。本とか雑誌をいつも読んでいるみたいなんだけど、なんで部屋に戻らないんだろう、足痺れるよね?といつも思っていた。他に使う人もいるのに、意味が分からない。

 でも、最近、私も本だったか雑誌だったかを同じようにトイレの中で読んでいて(父ほど長時間ではない)、なんとなく長居してしまう理由がわかった気がした。鍵が閉まっていて他人が入ってくることがまずない。あと、携帯をも持って行く時もたまにあるけど、本や雑誌を読む以外にすることがない。それから、音がない。何と言うのか分からないけど照明の音、それからウォシュレットの音がずーっと続いているだけ。集中するのにちょうどいい騒音である。そして、あの狭さ。

 あそこは、読むものによってどんな空間にもなる、特別な空間なんじゃないかと思うようになった。

 なんか、宇宙みたいな。狭いのに、すごくのめり込んでしまって、広大な自分の世界になるような感じがする。一つの世界が広がるのは自分の部屋でも同じなんだけど、なんでだろう。私は集中力がなくて他のものに手を出してしまうからかな。大学受験の時に高校の先生から、トイレの中は、ものを読んで内容を頭に入れるのに最適な場所であるって聞いたことがあったのを、今思い出した。狭い読書室が欲しくなる。

 そんなわけで、本人がどういうつもりで長居してるのか分からないけど、お父さんがトイレにいるあの空間でどんなことが起こっているのか、私なりに想像ができるようになったので、お父さんのトイレ滞在に関しては、少し寛容(?)になった。しかしながら、彼は出たあと電気を消し忘れることがよくあって入っているのかいないのか分からなくて困るので、ちょっとまだうーんって思ってはいる。